CO-2N研究所

勉強ではなく、好きなことをとことん研究する場所。主に「演劇」「読書」について

発声の落とし穴にはまるな!!(5)

発声の落とし穴シリーズも5まできました。 前回までの復習はできていますか?

前回の「横隔膜」のことを理解できているとわかりやすいと思います。前回の続編という気持ちでごらんください。

 

 

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いよいよ・・・

 

腹式発声と胸式発声について!!

長くなりそうなので、覚悟してください。

 

 

④「お腹の下に息を入れて!!」

 

この危険な指示には二つの誤りがあります。それを詳しく解説します。

 

⬇︎参照⬇︎

 

 

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腹式呼吸と腹式発声の違いとは?

 

腹式呼吸・・・横隔膜の上下運動を利用して呼吸をすること 。

腹式発声・・・横隔膜の上下運動を利用して声を出すこと。

 

簡単に書くと上記のような違いです。

書くと当たり前のことなのですが、これさえも勘違いしている方もいるので書きました。以降、使い分けて書きます。

 

 

「腹式」というワードは声を使う人なら、役者に限らず聞いたことのあるワードかと思います。しかし理解している人はごくわずかです・・・いろいろと頭を悩ますことが多いと思いますが、お付き合いください。

 

 

腹式呼吸のしくみとは?

 

「お腹の下に息を入れて!!」なんて聞きますよね? あなたがちゃんとした身体の仕組みを理解しているのであれば、これができる人が人間がいないということがわるでしょう。

前回の記事にも少し書きましたが、心臓と肺の下に横隔膜があります。

 

(図1)

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上の(図1)を見てください。ご存知の通り、吸った空気が入るのは肺です。もし空気がお腹の下に入るとすれば、大腸や小腸に達していることになります。これは解剖学的にはありえないことです。

 

腹式を用いて呼吸をするときにお腹が膨らむ理由・・・

 

息を吸う

  ⬇︎

肺の下部に空気が届く

  ⬇︎

横隔膜によって胃や肝臓や腸が下に下がる

  ⬇︎

お腹が膨らむ

 

という過程があります。これをただしく理解しましょう。肺は(図1)の箇所から移動することはできません。前回も書きましたが、随意で動かせるのは横隔膜です。

 

 

 

腹式呼吸と胸式呼吸の違いとは?

 

腹式呼吸・・・横隔膜の上下運動を利用した呼吸。

胸式呼吸・・・胸の力を利用して肋骨を開いて行う呼吸。

 

腹式呼吸は寝ているときに自然としている呼吸です。胸式呼吸は息が上がっているときなどになりやすいです。ではなぜ演技のレッスンでは腹式発声を勧められるのでしょうか? それは腹式発声のメリットから考えることができます。

 

腹式発声のメリット

 

1 リラックス効果

寝ているときにしている呼吸だけあり、全身に余分な力が入りにくくなります。

 

2 声の支えを作る

横隔膜の運動を使い、喉に頼らずに声を出すための支えを作れます。

 

3 息の量をコントロールできる

横隔膜の運動を使い、喉に負担をかけることなく口から出て行く息の量をコントロールできる。

 

 

では胸式発声が良くないとされるデメリットについては?

 

 

胸式発声のデメリット

 

1 力みやすい

呼吸が肺の下部まで行き届かないことにより、肩が上がりやすくなり力みやすい。

 

2 首回りの緊張

横隔膜で支えを作れず、喉も窮屈に締まり、発声時に声帯への負担が大きくなる。

 

3 呼吸が浅くなる

肺の下部まで息を吸えないために、呼吸が浅くなる。

 

 

このような理由が主でしょう。しかし、胸式発声は絶対にしてはいけないでしょうか? 確かに声帯の負担軽減を考えると、多用はしないほうがよさそうです。しかし、演技において必要なシーンも出てくることでしょう。例えば、走った後や緊迫する場面では胸式で呼吸するのが自然です。私は生徒たちに腹式発声を指導しますが、演技のバリエーションを増やすためにも胸式発声は絶対にダメなことだと教えません。自分の身体を理解して「これくらいなら大丈夫」と判断できる場合は狙って使うことを指導しています。もちろん、しっかりと腹式発声を身につけてからの話ですが・・・

 

 

発声のしくみとは?

 

発声は吸った息を声に出すことは理解されているかと思いますが、どのような過程があるのでしょうか?

 

息を吸い、肺に空気をためる。

    ⬇︎

たまった息を吐き出す。

    ⬇︎

声帯が振動する。

    ⬇︎

共鳴腔(きょうめいくう)によって音に変わる。

    ⬇︎

口から声として出て行く。

 

こんな順番があるのです。声帯が声を生み出しているわけはありません。声帯の役割は鳴らすだけです。ここも勘違いしないようにしましょう。そして新しい言葉が出てきましたね・・・「共鳴腔(きょうめいくう)」とはいったい???

 

 

共鳴腔とは?

(図2)

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共鳴腔は三つあります。(図2)をご覧ください。

 

咽頭腔(いんとうくう)・・・声帯に一番近く、声を出すときに最初に機能する共鳴腔。

 

口腔(こうくう)・・・口の形、舌、歯を使う。コントロールしやすい共鳴腔。

 

鼻腔(びくう)・・・高音を使うときや「な」「ま」「ん」行で活躍する共鳴腔。

 

 

この三つの共鳴腔が上手く使えると、響く声になります。トレーニング方法は次の記事で・・・

 

 

まとめ

今回はまたまた詳しく身体について書きました。知識がある上で練習をするのと、無知で練習をするのでは、大きく差が出ます。「これはいったい何のための練習なのか?」という疑問は基礎であるはずの発声練習に多い傾向があります。

レッスンで一番質問をされるのが声についてです。それだけ、自分の中で正解がわからないということでしょう。いよいよ次回はこれまで書いた発声シリーズのトレーニング方法を書かせていただきます。

 

 

 

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