CO-2N研究所

勉強ではなく、好きなことをとことん研究する場所。主に「演劇」「読書」について

セリフ覚えが悪い・・・

役者が本番に向けて稽古をするにあたって、最初に時間を要するのがセリフ覚えですね。

演出家によっては、本読みの次の日から台本を離すように指示されることがあります。私もセリフ覚えは非常に苦手でした。どうしたらセリフ覚えが良くなるのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

【明日までに覚えてくれ】

 

学生の頃、私は主役の座を射止め、浮かれる間も無く本読みが始まりました。演出家Yさんは多忙な方で、本読みには姿を現さず、演出助手の方が本読み終了後に・・・「Yさんは、台本持って稽古することを許さない演出家なので、明日までに覚えてきてください」との指示・・・

 

私は、その晩、徹夜をすることになるのですが、若さ故か必死に頭に叩き込みました。しかし、午前3時を過ぎても覚えることができず、すっかり覚醒した明け方4時から、様々な方法を検証しました。

 

 

【気合いでは覚えられない】

 

後に、稽古日程に記載されているシーンのセリフを覚えていけばよかったことに気づくのですが、なにが起こるかわからない舞台稽古で、自分がセリフを覚えていないせいで稽古が進まなくなるのは申し訳ないと思い、1幕の膨大なセリフをお経のように唱えていました。しかし、何度やってもセリフが覚えられることができません。

 

学生の気合いだけでは、この壁を乗り越えることができないと確信し、反復練習は字面だけしか頭に入らず、演技をするところまでたどり着くことはできません。

 

 

【方法1】

 

一度、書くことで頭に入れることをしました。しかし、ただ書くだけでは漢字ドリルのような暗記になってしまいます。役者におけるセリフ覚えの考え方は、暗記ではありませんよね? セリフを意味として覚えて感情に繋げるには? 抽象的な捉え方ですが、それを自分の中で具体的なものにしなくてはいけません。私が行ったセリフを書く方法は・・・

 

青字でセリフを書いていく。

赤字でセリフの核を書く。

 

(例)

「昨日、セリフを覚えるために徹夜をしたんだ」

 

 

前後のセリフによって核が変わってくることもありますが、このセリフの前に「疲れてない?」というセリフがあった場合は、それに対する返答で大切なところ核を赤にすると・・・

 

昨日、セリフを覚えるために徹夜をしたんだ

 

となります。なぜ青と赤に分けるのか?

 

青・・・集中力を高める

赤・・・注意を促す

 

上記のような、効果があると言われています。人によっては基本は黒字で書いて核を青にする。などと自分がやりやすいスタイルを見つけることをお勧めします。

 

 

 

【方法2】

 

相手役のセリフを自分で発し、自分のセリフのところは無音で録音する。

 

これは、とても勉強になりました。相手役を自分でやることによって自分がどうセリフを伝えればやりやすいのか? とわかります。それと同時に録音したシーンを再生すると、自分のセリフ覚えのチェックもできます。

 

これを勧めても、実践する人が少ないのが現状です。たかが録音するだけなのに面倒臭がるのです。気持ちはわかりますが、私は他の人がやっていないことを試みることが、この世界では大切ではないでしょうか? と言い続けています。やってみて失敗であったらやめれば良いだけの話です。やる前から判断する癖がつくと、挑戦する気持ちが衰えていきます。ぜひ、お試しください。

 

 

 

【レッスンで・・・】

 

人よりセリフ覚えが悪かった私は、学生時代に「セリフ暗記」を行うトレーニングで恥をかきました。そのトレーニングとは・・・

 

・ 5〜7行のセリフが書いた紙が用意される。

・ 制限時間7分で全てを暗記。

・ 7分後に台本を見ずに目の前の相手にセリフを言う。

 

いたってシンプルなトレーニングでしたが、これが非常に難しいのです。暗記で思い出しながらやるのであれば簡単です。しかし、セリフとして相手に伝えなければ演技になりません。途中で間を作ってはいけませんし、相手から視線を逸らしてもいけません。思い出そうとすると、人間はよそ見をします。

 

このトレーニングはできた人から抜けていき、できない人は何度も繰り返し仕切り直して行うのです。私は、最後の最後までできませんでした・・・その日の帰り道は落ち込みました。

 

 

 

【不得意が故に・・・】

 

その日から、私はこのトレーニングを定期的に自分の課題として取り組むようにしました。文章であればセリフではなくても構わない! と決めて、新聞や小説の中から5行を7分で覚えて、家にある人形に向かって視線を逸らさないように・・・と繰り返して行いました。

 

すると、効果はすぐに表れました。一ヶ月も経てば、5行では物足りなくなり7、8行で時間も5分に設定してできるようになったりと、自分で変化がわかるほどセリフ覚えが良くなったのです。

 

人前でやっていなかったので、友人にも手伝ってもらい挑戦しましたが、それでも確実に変わりました。不得意が故に、できると喜びは倍増でした。

 

 

 

【大切なことは?】

 

この世の中には、一度で台本を暗記してしまう人も存在します。羨ましい限りですが、セリフ覚えが悪いからといって役者をやってはいけないというルールはありません。こんなにセリフ覚えが悪かった私も、克服することができたのですから、皆さんにもできます!!

 

セリフ覚えは面倒な作業です。しかしトレーニングや自分に合った方法を見つける作業を日頃から準備しておくことで自分を楽にしてあげられます。

 

そして、これから皆さんが関わる仕事で、緊急時に他の役をカバーしないといけない瞬間があるかもしれません。その時、わずかな時間で台本を覚えて演出家やプロデューサー、役者仲間に、一目置かれるチャンスがあるかもしれません!! 役者が売れていくきっかけは意外とそんなところにあるのです。偶然にめぐってきたチャンスを掴める準備をしておいても良いのではないでしょうか?

 

また「こんな覚え方もあります!!」などといった声もお聞かせください。

 

 

 

 

 

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