CO-2N研究所

勉強ではなく、好きなことをとことん研究する場所。主に「演劇」「読書」について

発声練習の落とし穴にはまるな!!(3)

前回は正しい姿勢について書いたものの、声を出すところまでたどり着かず終わってしまいました。しかし大切なところなので 丁寧に解剖学を交えてお伝えしました。自分の骨盤、背骨の理想のポジションは理解できたでしょうか?

 

下の記事を参考に、もう一度復習するのも良いでしょう。様々な姿勢での発声についてはレッスンの方法を含めて、まとめで載せますので、ひとまず先に進みます。

 

 

co-2n.hatenablog.com

 


 

②「息をお腹いっぱいに吸って!!」

 

これもよく稽古場で聞く言葉ですが、危険な問題があります。

まず、私たちが日常で自然に行っている呼吸ですが、一度にどれだけ吸っているかご存じでしょうか? 実は、約500mlの空気が肺に出入りをしているのです。500mlペットボトル1本分と考えると、多いですよね。それに対して深呼吸をするときは倍の1000mlが肺に出入りしています。多く息を吸うには、それだけ多くのエネルギーを要します。

それを声に変換するときに重要になってくるのが、声帯です。

 

 

(図1)

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(図1)にある通り、呼吸時は声帯が開き、空気を取り入れやすくなっています。発声時には声帯が閉じて、中の空気が外に出る力で声帯が振動して声となります。

これもまた勘違いされていることですが「声帯は筋肉」と言われていますが、正確には「粘膜のヒダ」です。つまり鍛えることは不可能な箇所になります。

鍛えることができるのは・・・

 

閉鎖筋(へいさきん)

声帯を閉じる際に使う筋肉。主に地声の時。

 

輪状甲状筋(りんじょうこうじょうきん)

喉を開く際に使う筋肉。主に裏声の時。

 

の部位となります。しかし、これを鍛えたから発声が良くなる・・・なんて単純な話はありません。逆に、喉に頼って声を出してしまう癖がついてしまう可能性がありますのでご注意を。

 

 

 

(図2)

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(図2)は声帯がどこにあるかを示しています。どうでしょうか? たまに「喉が痛い」と言いながら触っている箇所よりも少し下の方ではないでしょうか? 

そして気づいて欲しいことが・・・咽頭から下に分かれ道になっているのですが、喉頭→声帯→気管へと続く道、そして食道へと続く道です。

ここで疑問に思った方は素晴らしい。喉が痛い時に皆さんがやっていることはなんでしょう? 多くの方はのど飴を舐めていませんか?

しかし、普段飲み込む唾液や水分や食べ物は食道に流れます。つまり、のど飴に声帯を良くする効果はないということがわかります。のど飴は口内や咽頭の乾燥に効果はあるものの、声帯に届かないとなるとどうすればいいのでしょう? 残念ながら休ませる以外の方法がないのです。耳鼻科に行くと声帯の様子をカメラで撮ってくれる病院があります。違和感を感じた際は、面倒くさがらず診てもらうことが最短で治すための一歩です。

 

 

(図3)

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(図3)は声帯ポリープです。生々しい画像が苦手な方のためにイラストを使っていますが、ネット検索や動画で声帯ポリープができた患者さんの画像などはすぐに見つかると思いますので、興味のある方は是非。

ポリープができる前に炎症というものもあります。高い地声や裏声が出ない場合は炎症を疑いましょう。声帯の粘膜ヒダが正常に閉じれなくなると、そこから空気が抜けてしまいかすれた声になってしまいます。これがかすれ声の正体です。逆に低い声はいつもより出やすく、出したことのないような低音が出ます。

 

人によって喉が強い、弱いということがあると思いますが、強いと思っている方は特に注意が必要です。私は喉が弱いので、少しの異変でも気になってしまうのですが、強い方はポリープができるまで異変に気づかない方もいます。そうなると、声を出せるようになるまで、とても時間がかかります。最悪の場合は声を失うこともあります。

 

 

声帯がとても繊細な部位であることがお分かりいただけたと思います。息をおもいっきり吸って声にする作業で、どれだけ声帯が消耗するでしょうか? 私も勉強する前は間違った声の出し方をしてしまい、本番前に炎症が発覚し、辛い経験をしました。小声でも傷つき、大声なんてもってのほか・・・本を読む時も声帯は力んでしまい、テレビで喋ってる人を見ても声帯は働き続けます。寝ること以外に早い治癒方法がありません。

 

私が推奨する発声方法のテーマは「リラックス」です。

 

「最小限の力で最高の声を出す!!」

 

ことが理想ではないでしょうか? スポーツにおいても、上手な人ほど力みがありません。あなたが上手いと思う歌手や役者さんは力一杯歌ったり喋ったりしているでしょうか?

 

しかし、どんなに正しい発声を身につけていても、声帯は消耗します。休ませてあげなければ炎症を起こすのが普通です。それでも役者を志す人間は、声が出なければ仕事にならないと言っても過言ではありません。体をいたわり、息の長い役者を目指しましょう。

 

しっかりと練習方法はまとめで載せます。もうしばらく身体についての記事にお付き合いください。

 

 

 

 

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